メモオフの地理2/2(架空の神奈川県)
前記事で実在の神奈川県について解説した。
本記事では、メモオフ舞台である架空の神奈川県について考察していく。
メモオフ舞台はよく考えられていて、県外人であれば、ああこれがリアルな神奈川県なんだと、誤解を与えるほどである。
が、地元県民としては明らかにおかしい違和感を抱く箇所が多くあるのだ。
そこで実在神奈川県と、架空神奈川県との差異について考察するのがこの記事である。
メモオフ歴代作品は、芦鹿島電鉄線沿いの町で物語がつむがれる。
そこで、まずは架空の芦鹿島電鉄と、実在の江ノ島電鉄との対応づけからはじめてみよう。
芦鹿島電鉄(架空)が江ノ島電鉄(実在)のことであることは誰しも分かっていた。ところが実在とは矛盾する設定がいくつもあった。
最大の謎は、澄空(架空)よりさきにある駅であった。澄空(架空)が鎌倉(実在)に対応しているのだが、実在では鎌倉駅が江ノ島電鉄の終点であり、さきには駅など存在しない。それなのに芦鹿島電鉄(架空)では澄空駅(架空)よりも先に駅がある。はたして千羽谷(架空)や鴨浦(架空)はどこに対応するのかさっぱり分からなかった。
多くの謎があった芦鹿島電鉄(架空)だったが、メモリーズオフ最終作である第8作においてついに本編のなかで路線図が公開された。
さらに長年謎だった千羽谷(架空)が大船(実在)に対応することが公式に認められた。
(架空である芦鹿島電鉄の路線図)
藤川、柳小路、林鐘寺、湘南海岸公園、あしかじま、浜咲、桜峰、とわり、藍ケ丘、由比ケ浜、中目町、澄空、的射、北的射、千羽谷、綾園台、鴨浦
(実在する江ノ島電鉄の路線図)
藤沢、石上、柳小路、鵠沼、湘南海岸公園、江ノ島、腰越、鎌倉高校前、七里ケ浜、稲村ケ崎、極楽寺、長谷、由比ヶ浜、和田塚、鎌倉
まず、分かる範囲でこれらを対応づけよう。
(架空)→(実在)という対応関係。
藤川 → 藤沢
柳小路 → 柳小路
あしかじま → 片瀬江ノ島(注意)
浜咲 → 江ノ島
桜峰 → 鎌倉高校前
とわり → 七里ケ浜
藍ケ丘 → 長谷
由比ケ浜 → 由比ヶ浜
中目町 → 和田塚
澄空 → 鎌倉
的射 → 実在しない
北的射 → 実在しない
千羽谷 → 大船
綾園台 → 本郷台の可能性
鴨浦 → 横浜ドリームランドの可能性
まずは上記対応づけを、実在神奈川県地図で理解しておきたい。
林鐘寺(架空)については、第7作に出てくる駅舎風景が極楽寺(実在)に瓜二つである。ただ実在の地理では、極楽寺(実在)は藤沢(実在)からはるか遠くである。駅舎は極楽寺(実在)をモデルにしつつ、町並みは鵠沼(実在)をモデルにした合成モデルでなかろうかと推測している。
あしかじま駅(架空)は、やはり第7作に駅舎が出てくるが片瀬江の島駅(実在)と瓜二つだ。なお、片瀬江の島駅は、小田原急行電鉄の駅であり、江の島電鉄の駅ではない。
さて、千羽谷(架空)が大船(実在)であると公式に認められたことで、そのさきの駅についても考察できるようになった。
綾園台(架空)は第5作に出てくる地名だ。千羽谷(架空)とは至近の土地らしい。実在地名でそれらしきは本郷台(実在)ではないか?と推測される。
鴨浦(架空)は初代と第7作に出てくる。遊園地と屋外プールを併設した鴨浦マリンランド(架空)があるという設定だ。
すると地元神奈川県民なら誰もが思い出すのではないだろうか? かつてあった横浜ドリームランド(実在)のことを。
横浜ドリームランド(実在)は西暦2002年に閉園してしまったが、初代メモオフ発売1999年当時にはまだ営業中だった。遊園地と屋外プールが併設されていた。これをモデルとしていてもおかしくはないだろう。大船からなら比較的近い。
横浜ドリームランド跡地は、現在、霊園墓地として再利用されている。地図では、横浜薬科大学に隣接する緑地がその霊園墓地である。
さて以上で、芦鹿島電鉄(架空)の考察を終えた。メモオフの地理でもう一つの謎が、嘉神川(架空)である。
初見は第2作である。メインヒロインである白河ほたるが、主人公イナケンに告白し交際を求めたのが、嘉神川にかかる登波離橋であった。
その後、第3作や第4作でも重要な舞台装置として登波離橋がくりかえし登場している。
この嘉神川だが、河口付近の川幅は広くて明らかに一級河川だ。実在ではこの地域にこれだけの川幅の河川など存在しない。カガミガワという読み方からもサガミガワを連想させるし、嘉神川(架空)のモデルとなったのは相模川(実在)だろう。
相模川(実在)の河口の川幅は広く、メモオフ作品と似たような感じだ。但し、 実在の相模川は、江の島よりずっと西の茅ケ崎と平塚のあいだに河口がある。
メモオフ作品中の嘉神川(架空)の設定としては、
1)千羽谷(架空)の横を流れている。
2)河口があるのは桜峰(架空)と登波離(架空)の中間だが、やや桜峰寄りにある。
千羽谷(架空)が大船(実在)に対応することから、大船の横を流れる河川はないだろうか? ある。柏尾川(実在)である。
柏尾川(実在)は境川(実在)の支流であり、途中で境川本流と合流して、境川として海に流れ込む。境川の河口は江ノ島(実在)にある。
メモオフと同じ地理にするためにはやはり柏尾川(実在)の流路を変えなければならないようだ。
地図をみて思ったのは、柏尾川は途中で境川に合流すべく流路を真西に曲げるのだが、ここで曲げずにそのまま県道304号線沿いに南下させれば、ちょうど鎌倉高校前(実在)と七里ケ浜(実在)の中間に河口がきそうだ。
鎌倉高校前(実在)が桜峰(架空)に対応し、七里ケ浜(実在)が登波離(架空)に対応しているのだから、これでつじつまが合うわけだ。
以上の考察をまとめた地図が下記の通りである。
嘉神川(架空)は柏尾川(実在)をモデルとするも、その流路は実在とは異なっている。
さらに河口付近が相模川(実在)をモデルとする。
上記地図で、メモオフの地理は説明できるはずである。けっこう自信作だ。