【ネタバレあり】メモオフ4(4/8)
メモオフ4紹介 4/8
学園編、陵いのりシナリオ卒業式エンド。
恐らくだが八割がたの初回プレイヤーは、最初に陵いのりシナリオを見ると思われる。冒頭の不可解な行動の謎を知りたくなるため。
ただ、TRUESTORYシナリオが解放されないと真相究明はされない。ゆえに学園編陵いのりシナリオはその前座で、盛り上がらずにダラダラ展開である。鷺沢一蹴は、陵いのりを忘れたくても忘れられない。卒業式までの1か月ずうううっとグダグダする。
陵いのりの態度がおかしくなったのは、飛田扉が現れてからであった。飛田扉と陵いのりの関係がわからず、陵いのりは飛田扉に片思いしているのではないか?そのためフラレたのではないか?と疑心暗鬼になる。
幼少のときも飛田扉は、誰とも話さず誰にも心を開かず、ただただ世界を憎んでいた。
鷺沢一蹴は、孤児院から鷺沢家に養子にいったので10年ぶりの再会である。
飛田扉の様子がおかしい。もともと愛想のない奴だが、愛想というよりオレを憎んでいるような態度だった。訳が分からない。頭イカれてんのかコイツ。
「おねがいやめて飛田さん。一蹴もう行って。」
オレより飛田扉の肩を持つのかよ。
落ち込む鷺沢一蹴。
だがバカップルをよく知る周囲の人間は、なんとかバカップルを元に戻してやろうと励ましてくれた。
喫茶店ならずや常連の黒須カナタ。陵いのりとは同じ小学校の幼なじみらしい。カナタのほうが2歳年長。浜咲高校中退とはいえ一蹴の先輩でもある。陵いのりとの仲を戻そうと一蹴を焚き付ける。
喫茶店ならずや店長代理の白河静流さんも、
「一蹴くんはもうあきらめちゃったの?」
白河ほたるからは、陵いのりが、ピアノをやめるらしいと相談される。卒業式前日にあるピアノコンテストにも出場しないうえ、せっかく合格している音楽大学へも行かないと。陵いのりへの説得を頼まれる。
稲穂信だけは異なる意見だった。
「すっぱり忘れちまえ。距離感が大事なんだ。とことん踏込むか、あきらめるか、どっちかにしろ。」
「男女間で親友なんて有り得ない。いちばん近くで見守ってやるなんて都合のいい言葉は、あわよくば元に戻れるんじゃないかって未練だ。つらいだけだぜ。」
稲穂信には反発したが、やはりこれは未練なのか、と落ち込む。
すると音楽室のなかで陵いのりが立っていた。ピアノは弾いていない。だが、つらそうにピアノを見つめていた。
「弾きたいなら、弾けばいい。オレがいちばん近くで聴いてやる。」
とことんやるか、すっぱり忘れるか。
鷺沢一蹴は第三の選択肢をえらんだ。
そんなことないさ。男女間での親友だってあるはずだ。辛くも悔しくても泣きたくても、オレは陵いのりの親友でいよう。
飛田扉へ報われない恋に悩んでいるなら、オレが助けてやろう。親友として。
日曜日、ピアノコンクールがある日、千羽谷中央公園で飛田扉をみつけた。
「いっしょに来てくれ。時間がないんだ。」
「ふざけろ!何トチ狂ってやがる」
まったく話が噛み合わない。飛田扉を同行させることに失敗した。
鷺沢一蹴は、やむなく単独で藤川駅へ向かう。ピアノコンクールは藤川駅前だ。
なんとか陵いのりの演奏に間に合った。
ピアノのことはさっぱりだが、素人でも難しい曲だってわかる。
この曲が、陵いのりがピアノ人生最後に弾きたい曲なのか。大切なひとに聴いてほしかった曲なのか。
陵いのりは舞台のうえで泣いていた。泣きながらピアノを弾いていた。
ごめんな、飛田扉を連れてきてやれなかった。
だけどせめてオレが聴いてや。そしてほめてやる。オレはいのりの親友だから。
ピアノコンクールの翌日、月曜日。
浜咲高校の卒業式だ。
鷺沢一蹴の胸に、この3年間の想い出が去来する。想い出のすべてに陵いのりが笑っていた。卒業式がおわって校舎をみあげる2人。