【ネタバレあり】φなる・あぷろーち2 (1/6)
φなる・あぷろーち2は、プリンセスソフト(株式会社オークスの開発チーム名)より発売されたギャルゲーである。まず2008年2月にPS2版が、次いで2009年4月にPSP版が発売された。
ギリシヤ文字のφはファイと読むので、ファイナルアプローチと発音することになる。
副題は、1st priority。最優先事項という意味深な副題となっている。
第2作という意味の2がついているが、第1作である φなる・あぷろーちの登場人物は全く出てこない。
ただし大財閥である益田家の使用人である黒服集団が大量に登場していることから、益田西守歌が舞台裏で暗躍していることは間違いない。第1作の数年後の物語らしい。
明言はされてはいないが、喫茶店プラーヴィの経営者もどうやら益田西守歌のようだ。
ここで第1作につき簡単に触れておくが、第1作はPS2ゲームだけでなく、ラノベ小説や、深夜アニメにもなったので多少は知名度があるはずである。
第1作のあらすじは、世界有数の大財閥である益田家ご令嬢、益田西守歌(ますだしずか)が、平凡な高校生である水原涼(みずはらりょう)のもとを突然訪れ、「はじめまして。わたくし涼様の婚約者の益田西守歌ともうします」といって押しかけ女房となる物語であった。
益田家使用人である黒服集団をつかってメチャクチャなこともお構いなし。常識?なにそれ? 金と権力に物をいわせ、無理を通して道理をひっこめる強引さに、当初は水原涼はウンザリしていたのだが、いつの間にか恋仲になるというギャルゲー展開であった。
益田家は総理大臣とも懇意であって、水原涼を説得するため日本政府内にRTP推進委員会という、いわば国民総お見合い制度を準備してしまう。コンピュータが無作為抽出した同世代男女をえらび、お見合い結婚をさせ、少子高齢化対策をするというプロジェクトだ。益田西守歌と水原涼がそのサンプルに選ばれたのだという。
実際にはRTP推進委員会など水原涼を騙すためのダミーであって、最初から益田西守歌は水原涼だけを将来の夫としていたのだが、なにゆえ初対面の水原涼にそこまでこだわるのか?というのが物語の肝であった。
さて第1作はいかにも王道ギャルゲー展開のハチャメチャぶりが人気だったが、第2作は比べると大人しい。現実的になったといいかえてもいい。
もちろんRTP推進委員会がまだ残っていたり、超法規で黒服集団が何でもやっちゃう所は多少はメチャクチャだが、物語の骨子はあくまで現実的である。
第1作はギャグ基調だったのに対し、第2作はシリアス基調である。このためか第2作はあまり売れず、知る人ぞ知る知名度の低い作品となってしまった。もちろんアニメ化もされていない。
しかしながら第2作のシナリオはどれも良くできていて、感動の涙を誘った。わたしなりに一言でまとめるならば、
主題は「家族」。家族って何だろう?と考えさせられた作品であった。
では第2作について。あらすじを簡単にいうと、
芸能人である人気絶頂アイドル歌手を誘拐して、監禁し、無理やり婚約者にしちゃおう、という物語である。
主人公である、児玉 愛(こだま まこと/男性)は高校2年生。通称マコ。
その育ての親である、懸樋 光(かけひ ひかる/女性)。通称コウさん。
主犯コウさん、共犯マコで、アンナ誘拐を実行することになる。
誘拐のターゲットは、アンナ。
2年前に彗星のごときデビューをして以来、ヒットチャートの最上位に君臨。全く衰えを見せぬ人気絶頂アイドルである。
人気バンドTHSのボーカル歌手だ。
欧米人の血が入っているため、流れるような美しい銀髪をもち、彫りが深く、すっきりとしたアゴの線、切れ長の瞳。鈴が鳴るような歌声。
誰しもを魅了する超絶美少女である。
武道館とおぼしき会場では1万5000人が満席になるほどの人気だ。
暗躍する協力者(おそらく益田西守歌)による工作で、まんまとアンナとの接触に成功。
激しく抵抗するアンナを、気絶させて連れかえることとなった。
こうして物語はスタート。
築20年の古いマンションの部屋で、5人の同居生活が始まるのだった。
懸樋 光(かけひ ひかる/女性)。通称コウさん。家主であり、主人公の育ての親である。主人公の母親とは似たような境遇ということもあって親友であった。
かつて祝福されない恋に苦しんだ過去をもつ。四十代近いらしいが年齢不詳の美形。
178センチと長身で、彫りの深い王子様のような出で立ちのため、事情を知らない喫茶店の来客には男性と思われている。喫茶店プラーヴィは、コウさん目当ての女性客でいつも賑わっている。
喫茶店プラーヴィ西末原店の店長をつとめており、集客のためかフランス貴族のような服装をしている。
国立 千都瑠(くにたち ちづる/女性)。通称ちー姉。炊事洗濯の家事を一手に引き受けているお姉さん。
コウさんの姪として、6年前から同居している。居候させてもらって悪いからという理由から、喫茶店経営で多忙なコウさんの代わりに家事手伝いを丸ごと負担してくれており、5人の同居人にとって食卓を預かるお母さんのような存在。
主人公より3歳年長の大学生。20歳。細身の美形で、街を歩けば男たちが振り返るくらいのキレイなお姉さん。
作中で誰もが振り返る美形と明言されているのは、この千都瑠と、美咲桜と、コウさんの3人だけである。
児玉 愛(こだま まこと/男性)。通称マコ兄。蒼翼高校2年生。愛という文字が、マコトという変わった読みになっている。今は亡き母親、児玉真奈美の想いなのだろうと本人は考えている。
父親である片岡和樹は当時妻帯者であり、母親である児玉真奈美とのあいだに不倫の子として生まれた。
このため当初から母子家庭だったが、4歳のとき母親を交通事故で亡くし天涯孤独。その後に、母親の親友であった、懸樋光ことコウさんに引き取られる。
しばらくはコウさんと2人で暮らしていたが、10歳ごろにコウさんの姪を名乗る千都瑠がふえて3人となる。
さらに中学卒業直前に14歳ごろ、自分の父親である片岡和樹と初めて対面。片岡家正妻がうんだ腹違いの妹である片岡和瑞とも初対面する。なお、この頃には片岡家正妻は死去していた。
片岡和樹に対しては当初、怒りしかなかった。十数年も放置しておきながら、今更のこのこ現れて何の積りだ。
片岡和樹と児玉愛の容姿はとても似ており、間違いなく遺伝上の父親であることは分かった。
しかし児玉愛はどうしても片岡和樹を父親とは認める気持ちになれなかった。児玉愛にとって親とは、自分を育ててくれたコウさんである。
初対面から2年経過した現在、当初の怒りも薄れて、また、中学生から高校生になったこともあり片岡に対する感情はかなり冷静にはなっている。
しかしながら片岡へは「片岡さん」とか「あの人」という呼称を使っている。
片岡和樹も負い目があるため息子とは呼べずに「まこと君」と呼称する。
なお、容姿は平均並みらしい。不細工ではないが美男子でもない程度。ただ、周囲にいる女の子たちがアンナや千都瑠や和瑞といった美少女ばかりのため、比較すると見劣りしてしまうことにやや劣等感がある。
片岡 和瑞(かたおか かずみ/女性)。通称カズミ。主人公とは腹違いの妹にあたる。
父親である片岡和樹は建築設計をするフリーランスであり、おもに海外からの顧客のオファーを受けて世界中を飛び回る多忙な人物。
17年ほど前に、当時正妻と夫婦関係が冷え込んだ時期があり、その寂しさから児玉真奈美の優しさに甘えしまい不倫をしてしまった。そのときに真奈美のお腹に子供(児玉愛)が宿った。
ところが正妻のお腹にも子供(和瑞)ができたことが判明し、正妻と別れることができなくなってしまった。その後は正妻と和解して円満な夫婦関係となったが、和瑞の母親である正妻はその後に死去してしまった。
現在は、父親である片岡和樹と、娘の片岡和瑞の2人暮らし。ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカと世界各地の建築にかかわったが、ようやく日本に帰国する決心をし、日本に新居をかまえた。
およそ2年前、娘である片岡和瑞は、生まれて初めて、父親の隠し子の存在を知り、対面した。児玉愛は2月生まれ、片岡和瑞は3月生まれで誕生日はわずか2週間しか違わない同学年ではある。
初対面で、和瑞はすっかり愛を気に入ってしない、お兄ちゃんお兄ちゃんとなついてしまう。やばいくらいのブラザーコンプレックスである。
「お兄ちゃんのお嫁さんになりたいけど、兄妹じゃ結婚できないよね。仕方ないから、マコ兄はミサ姉にゆずってあげるね」といつも残念がっている。
なお、ギャルゲ世界では実妹もちゃんと攻略ヒロインになるのはお約束だ。
明るく元気で親しみやすく、すぐ友達になってしまうクラスの人気者だ。
アンナや千都瑠のように誰もが振り返る美形というわけではないが、学校の美少女コンテストとなれば間違いなく候補にあがるであろう、かわいい娘。
来住 美咲桜(きすみ みさお/女性)。通称ミサ姉。本名が美咲桜、芸能活動での芸名はアンナという欧米風の名前にしている。
母親は死んだと聞かされており、父親と祖母に育てられたが、1年前に父親を亡くしているため、現在の肉親は祖母のみ。厳しい祖母はもともと芸能活動には反対している。
2年前にTHSのボーカルとして超新星デビューを果たす。
突然の誘拐に激怒し、何度となく逃走をはかるが、益田家使用人である黒服集団の妨害でことごとく失敗。警察や鉄道、学校、芸能プロダクションまですべて国家権力のちからでねじ伏せて、美咲桜が逃走できなくしてある。
穏やかで優しく天使とさえ言われるアンナは仕事上の仮面であって、本来の美咲桜はめっちゃくちゃ気が強くて、口が悪い女の子と判明する。
不本意な婚約を拒否し、コウさんのことを「誘拐犯」とか「アホの格好をしたオスカル」と罵倒。
児玉愛のことも「誘拐犯の共犯」「あんたなんかと結婚するわけないじゃない」と罵倒。
意地でも逃げてやるんだから、と逃走をくり返すのだがことごとく失敗。
網で吊るされたり、電流を流されて痺れたりと、作中メインヒロインとか、現役トップアイドルとかとは思えない雑な扱いを受ける。