同床異夢、プレステ3こそソニー社の理想形
同じ寝床にいながら、見る夢は異なる。
私はプレステは最高のゲーム機だとみなしている。
だけどソニー社はそう思っていない。
ソニー社にとってプレステとは、総合エンターテインメント機器なのである。
ユーザーとメーカーの認識の齟齬がこれまで何度もあった。
ソニー社が満を持して打ち出した新機能がたいていユーザーから受け入れられずにお蔵入りになる。
何度もソニー社は繰り返すが、それはソニー社の目指す理想のためだろう。
そもそもプレステの名前の由来は何だったか。
仕事で使うコンピュータを「ワークステーション」と呼ぶことに対して、遊びで使うコンピュータという意味で「プレイステーション」。
ここにはゲームのみならず、音楽や映像も楽しめるように、という願いが込められていた。
初代プレステには、CDROM読み取りができたので、音楽やCDROM映像が再生できた。
プレステ2では、DVD読み取りが追加され、より高精細映像が楽しめた。
プレステ3では、ブルーレイ読み取りに対応し、さらに周辺機器NASNE/TORNEと組合わせて地上デジタル放送テレビも視聴と録画ができるようになった。加えてネットワーク機能も強化されている。
ソニー社にとってプレイステーションの呼称に相応しい最高傑作は
おそらくはプレステ3なのだ。
プレステ3はゲーム機としては完全な失敗作である。多くのゲーム制作会社がXBOX360に流れてしまった。
ご存知のとおり日本においてアナログから、地上デジタル放送に切り替わったのは2011年である。
その少し前からブラウン管から液晶への移行がはじまっていて、高解像ハイビジョン放送という試験も行われていた。
これはプレステ3が販売されていた時期に重なっている。
プレステ2まではブラウン管アナログテレビと接続すればいいので解像度は640だったか720だったかで固定でよい。
しかし液晶により高解像となってくるとより高精細な1080だとかにしなければならなくなった。
歴代プレステ3型番を追っていくと
テレビ技術の変化に追従して、新規格を次々取り入れてきたことがわかる。
これはもうAV機器メーカーのトップとしての意地だったのだろう。
ソニー社がいかにプレステ3を愛していたか、よく分かるというものだ。
さらに言うとプレステ3発売時期には
インターネット通信が高速化した時期でもある。
西暦2000年代前半にはADSL回線、光ファイバー回線が登場しており
無線通信もどんどん高速化していった。
これにより従来ではできなかった新技術ができるようになった。
デジタルコンテンツをインターネット経由で配信することである。
音楽、映像、ゲーム作品を全てインターネット経由で家庭まで届けられるのだ。
これはソニー社としては燃えないわけがない。
Playstation Networkというサービスは
2006年11月スタートだったのだが
これはプレステ3発売と同時スタートだったのだ。
ソニー社にとってプレステ3はインターネット経由配信をするためのAV機器だったと言ってもよいだろう。
いったいどれだけ愛されているのかプレステ3は。
総合エンターテインメント機器として最高傑作であったプレステ3。
ゲーム機としては誰からも欠陥機とみなされたプレステ3。
この認識の齟齬が、ソニー社とユーザーとのミゾであった。
私などはプレステ3はほとんど電源を入れてない。年間で3日くらいしか電源を入れないのではなかろうか。
ゲーム機としてのプレステ3の評価はそんなもんだ。
では3日間は何に使うのか? うっかり間違えてブルーレイの映画を買ってきてしまったときだ。プレステ3を引っ張りだしてブルーレイ映像を楽しむのだ。
AV機器としてのプレステ3はとても便利なのだ。
プレステ4は、プレステ3の機能を継承してはいるがゲーム機としての本分を取り戻している。
NASNE/TORNE対応ではあるが、当時のプレステ3とは違ってあまり使う人はいないだろう。
2018年現在では液晶テレビ側で十分対応しているのだから。
だからゲーム機としてのプレステ4は高い評価を受けている。プレステ4を総合エンターテインメント機器とみなす人はあまりいない。
ゲーム機なのだからゲームに使う、これがユーザーの当たり前の感覚だ。
だからプレステ4は、きっとソニー社にとっては不満だろうね。