【ネタバレあり】初代ときメモ(16/18)
ときメモ(16)移植
1980年代半ばの第1次ゲーム機戦争で、MSX機と任天堂ファミコン機があらそい、任天堂が勝利。以来、1980年代後半の家庭用ゲー厶機は任天堂ファミコンが制覇することとなった。
そこにソフト会社であるハドソン社が、パソコン製造会社であるNEC社と提携して、PCエンジン機を発売したのが1987年のことである。
PCエンジン機は世界ではじめて光磁気ディスク(CDROM)を搭載した家庭用ゲーム機であった。のちに出るプレイステーション機やセガサターン機よりも先んじて光磁気ディスクを搭載したわけだ。パソコンでは既に光磁気ディスクは実用化されていたため、NEC社には光磁気ディスクの経験豊富だったのである。
任天堂ファミコン機はROMカートリッジというメモリ半導体媒体であり、当時の半導体集積技術では大容量メモリは製造できなかった。媒体容量は最大ですらたった1メガバイト。
PCエンジン機のCDROMはなんと媒体容量540メガバイトであった。じつに540倍もあるのだ。大容量媒体をいかしたゲーム作品で、PCエンジン機は任天堂ファミコン機を猛追したのであった。
しかし、いかに名機でも製品寿命というもがある。1994年ともなればPCエンジン機発売から数年経過しており、そろそろ生産終了して次世代機発売を視野にいれる時期であった。斜陽になりつつあるゲーム機には新規作品はあまり出ないものだが、コナミ社はなぜか「ときめきメモリアル」を1994年5月に発売した。PCエンジン機の後継機種であるPCFXが発売されたのは1994年12月であり、まさに閉店まぎわに新商品を並べたわけだ。
はたして「ときめきメモリアル」は空前絶後の大ヒット作品となった。しかしそれを動かすPCエンジン機が生産終了となる。コナミ社としては否が応でも他機種移植をせざるを得ない。ふつうに考えれば後継であるPCFX機への移植だが、PCFX機はすこぶる評判の悪い失敗機種であった。
1994年年末には、PCFX機、セガサターン機、初代プレイステーション機があいついで発売され第2次ゲーム機戦争が開始されたわけである。どれも光磁気ディスク(CDROM)搭載していたが、PCFX機は3次元グラフィックスためのポリゴン生成機能を積んでおらず全く売れなかった。
時代は3次元グラフィックスができる次世代機となって、セガサターン機とプレイステーション機がつばぜり合いをはじめたわけだ。
ここに絶対王者である任天堂がスーパーファミコン機をひっさげて参戦するという三つ巴の大戦争になったのだ。
困ったのはコナミ社であろう。他機種移植したいが第2次ゲーム機戦争はどこが勝つのか予想できない。どのゲーム機も人気があり勢力拮抗している。コナミ社が3機種への移植をしたのは、おそらく第2次ゲーム機戦争の行方が不透明だったせいだろう。
移植作業だが、まず最初にプレイステーション版への移植が成功した。PCエンジン機よりも、プレイステーション機のほうが高性能なので強化された移植版となった。
PCE版ではセーブデータはたった2個しか持てないが、PS版ではセーブデータを14個もてるのだ。
セガサターン機移植だが、プレイステーション機とほぼ同性能なので、PS版をそのままSS版として移植した。むちろん後発移植であるためSS版のほうがさらなる強化もされてはあるが、中核はPS版と同じだ。
問題は任天堂スーパーファミコン機であった。スーパーファミコン機は他機種よりも性能が低かった。何しろ光磁気ディスク(CDROM)を未搭載である。媒体は歴代ファミコンどおりROMカートリッジのままだった。ROMカートリッジの最大容量はたったの6メガバイトである。プレイステーション機光磁気ディスク容量650メガバイト、セガサターン機光磁気ディスク容量540メガバイトとはまるで比較にならない。
したがってSFC版は、容量削減のため機能を削る劣化移植となったわけだ。
具体的にはボイスデータを削減した。「ときめきメモリアル」の話題のひとつに、当時はまだ珍しかったフルボイスということがあった。声優さんがキャラクターの声を当てているのだ。フルボイスが可能だった理由は、PCエンジン機が光磁気ディスク搭載だったためだ。ボイスデータはすこぶる容量を喰うのである。
スーパーファミコン機ROMカートリッジではボイスデータなど収録不可能である。
声優さんの演技のこもったボイスデータがないため、SFC版では文字を工夫している。感情がこもったセリフ文字は強調している。
■ PCE版、1994年5月
PCエンジン機のためのオリジナル作品。
光磁気ディスク大容量をもとに、当時はまだ珍しかったフルボイス収録であった。
起動するといきなり藤崎詩織(の声優さん)がうたう主題歌が流れたのは、当時としては破格の豪華仕様だった。
セーブデータはたったの2個のみであるが、これは保存する半導体メモリ容量が少なかったためだろう。
導入部のプロローグ。
PS版だと4月4日夜間画面=入学式が終わった夜の画面ではデータセーブできないのだが、PCE版ではデータセーブできる。
なおPS版とは西暦が異なることにも注目である。
PCE版では入学式が1994年なのだ。
PS版のでは入学式は1995年である。
比較するために藤崎詩織の誕生日を6月29日にそろえたが、所属部活が電脳部になっている。これはPCE版とPS版とで部活計算式が異なるためである。
PCE版での部活計算式は、
(誕生月X3+誕生日)を11で割った剰余を算出する。
剰余ゼロが文芸部、剰余1が演劇部、剰余2が科学部、剰余3が電脳部、剰余4が美術部、剰余5が吹奏部、剰余6が野球部、剰余7がサッカー部、剰余8がテニス部、剰余9が水泳部、剰余10がバスケ部。
(6X3+29)=47
47=11X4+3 ゆえ剰余3だった。
■ PS版、1995年10月
導入部のプロローグは、PCE版と同じである。
PCE版の入学式は、1994年だったが、
PS版での入学式は、1995年である。
入学式を終えた4月4日夜間画面ではデータセーブできなくなっているのが相違点だ。
PS版での部活計算式は、
(誕生日X3+誕生月)を11で割った剰余を算出する。
剰余ゼロが文芸部、剰余1が演劇部、剰余2が科学部、剰余3が電脳部、剰余4が美術部、剰余5が吹奏部、剰余6が野球部、剰余7がサッカー部、剰余8がテニス部、剰余9が水泳部、剰余10がバスケ部。
(29X3+6)=93
93=11X8+5 ゆえ、剰余5。
■ SFC版、1996年2月
セーブデータは2個のみである。
導入部のプロローグは、SFC版だけ他機種とは異なった内容になっている。声優さんのボイスデータはなく、文字だけである。
入学式を終えて帰宅した夜画面。
PCE版入学式は、1994年。
PS版の入学式は、1995年。
SFC版入学式は、1996年である。
入学式の夜である4月4日だが、PCE版と同じくデータセーブできる。
所属部活がテニス部になっているが、部活計算式が他機種と異なるためだ。
SFC版での部活計算式は、
(誕生月X3+誕生日)を10で割った剰余を算出する。
剰余ゼロが文芸部、剰余1が演劇部、剰余2が科学部、剰余3が美術部、剰余4が軽音部、剰余5が野球部、剰余6がサッカー部、剰余7がテニス部、剰余8が水泳部、剰余9がバスケ部。
(6X3+29)=47
47=10X4+7 ゆえ剰余7だった。
部活動が他機種より少ない。
SFC版では電脳部が存在しないためだ。
ゆえに紐緒結奈は科学部固定である。
■ SS版、1996年7月
セガサターン機と、初代プレイステーション機とは、性能がほとんど同程度であった。
ゆえにPS版をそのまま流用できた。
導入部のプロローグも、PCE版、PS版と全く同じものである。
入学式は、PS版と同じく、1995年。
また入学式の夜間画面ではデータセーブできないのもPS版と同じである。
藤崎詩織の部活計算結果も、PS版とまったく同じである。
ここまでの説明だと、SS版はPS版とまったく同じに思えるが、最後発だけあって機能強化されている。
最大の強化機能は、主人公から女の子へと告白できる機能が加わったことだった。
他にも館林見晴イベントがPS版より増えていたり、細かい強化がいくつもあるようだ。
SS版こそ、初代ときメモの最終完全版といわれる所以である。