猫田にゃんの覚書き

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自分で忘れないよう知識を整理するまとめ帳

【ネタバレあり】メモオフ4(7/8)

メモオフ4紹介 7/8
TRUESTORY


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【学園編】

学園編では、飛田扉が、鷺沢一蹴を激しく憎み、陵いのりに対しても悪態をついた。

「まだ話してねえのかよ。汚い女だな。」

「この女はウソをついていたんだよ。お前のためにな。」

「ふざけやがって。全部無かったことにできるなんて本気で思ってんのかよ!」

「罪を償え。孤独に苦しみ続けろ。それがお前にとっての罰だ。」

鷺沢一蹴がどういった罪を背負うべきなのかは明らかにされない。飛田扉がそれを突きつけようとすると、陵いのりが必死に邪魔をするからだ。陵いのりは鷺沢一蹴に真相を知ってほしくないのである。


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【カフェ編】

カフェ編では、10年前の交通事故の加害者と被害者とが明らかになった。

加害者花祭果凛は、被害者鷺沢一蹴に、ひどいことをした。

加害者鷺沢一蹴は、被害者野乃原葉夜に、ひどいことをした。

加害者と被害者という人間関係。それなのに花祭果凛も、野乃原葉夜も、鷺沢一蹴のことを好きになってしまった。

花祭果凛も、野乃原葉夜も、気づいていたのだ。鷺沢一蹴が10年前のあの男の子だと。


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学園編、カフェ編、陵いのり卒業式ルートをへたのち、  TRUESTORYではついに10年前の真相が明かされる。

陵いのりの不可解な言動の謎、陵いのりのほんとうの気持ち。なぜ、鷺沢一蹴を真相から遠ざけたいのか。

全ては10年前の交通事故前後の出来事に起因している。

推理小説でいう謎解きのクライマックスだ。様々な情報が飛び交い二転三転する。

登場人物は3人。鷺沢一蹴、陵いのり、飛田扉だけだ。

陵いのりと飛田扉は、完全情報をもっている。鷺沢一蹴は、断片的な不完全情報しかもっていない。しかもその情報は相互に矛盾するものもある。だから何度も誤解してしまう。

 

飛田扉は、鷺沢一蹴に完全情報を知らせたいのだが、

陵いのりは、鷺沢一蹴を完全情報から遠ざけたい。

鷺沢一蹴は、群盲象を撫でる。目の見えない盲人が象を触ったとき、触れた場所によって異なる印象をもつ寓話だ。鼻を触れば「細長い動物」と思うし、足を触れば「丸太のような動物」、牙を触れば「硬い身体の動物」。

 

飛田扉は、10年前の真相を鷺沢一蹴に突きつけたいのに対し

鷺沢一蹴は、昔のことなどどうでもいい。知りたいのは、今現在の陵いのりの気持ちだけだ。ここでも話しが全く噛み合わない。

 

TRUESTORYでは、鷺沢一蹴が少しづつ少しづつ断片的情報を知るのだが

ある情報を知り、陵いのりを信じられる

ある情報を知り、陵いのりに疑心暗鬼。

これを交互に繰り返す。真相がわからいまま、何度も何度も、真相の周囲をぐるぐる回る。

ただしだ。情報が増えていくほど、真相に近づいていく。ちょうど渦巻きのように。ぐるぐる回るうちに渦の中心に近づいていく。


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TRUESTORYは、学園編の陵いのり卒業式エンドからの続きとして始まる。
1)一蹴は他のヒロインと恋人にならない
2)ゆえに陵いのりは、しばらくは一蹴のもとから去らない

3)一蹴と陵いのりは、友達関係となった

4) 一蹴は次のように考えている。

陵いのりは、飛田扉に恋慕している。

飛田扉は、陵いのりなど眼中になく冷たくあしらっている。

だからこれは陵いのりの辛い片思いだ。オレに対しての罪悪感もあるのだろう。辛いけれど悔しいけれど泣きたいけれど、オレに出来ることは陵いのりのために友達として明るく振る舞って、いのりの片思いを応援してやることだ。

 

そう思っていたのだが不可解なことが多すぎた。

片瀬山の廃教会の床にボタンが落ちていた。それはバレンタイン前日に、陵いのりからせがまれて渡した制服の第2ボタンだった。ずっと陵いのりは持っていたのだ。

水没して故障したとばかり思っていた携帯電話が、乾かしたことで復活。陵いのりからの電子メールが多数着信していた。

そして卒業式前日の日曜日に、ピアノコンクールで陵いのりが弾いた最後の曲。素人からみても難度の高すぎるあの曲は、超絶技巧練習曲9番というらしい。副題は「過去への回想」。あの曲を聞かせたかった相手は、飛田扉ではなかった。


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こうして再び、鷺沢一蹴は、陵いのりを追いかける決意をする。

片瀬山の廃教会で見つけた一冊の絵本がきっかけとなり、10年前の記憶が断片的に蘇る。

鷺沢一蹴がいた孤児院のとなりにあった総合病院。そこには同い年の女の子が長期入院していた。アンデルセン童話「天使」という絵本が大好きでいつも胸に抱えていた。

「わたしにも翼があれば自由にお外に行けるのになあ」

鷺沢一蹴はその女の子のことを、つばさちゃんと呼んでいた。いつもお外に出たいと願う彼女にために、孤児院で習ったソウチンニャン人形を病室に吊るした。子供の一蹴がつくった手作りの不細工な人形だ。

ずっと忘れていた。だが重要な情報である。

なぜ? あの不細工な人形が、陵いのりの部屋にあったのか?

10年前、鷺沢一蹴は、手術に怯え逃げだしたいつばさちゃんを病室から連れだして、土砂降りの雨のなか道路に飛びだした。

逃走は失敗し、鷺沢一蹴は交通事故にあい、つばさちゃんは病室へと戻された。それっきり、つばさちゃんとは会えなかった。

はず、だった。


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陵いのりが、つばさちゃんなのか?それならばなぜ?ずっと黙っていたのか?

飛田扉がオレを憎む理由はなんなのか?

そしてなぜ、陵いのりはオレの前から去ろうとするのか? 何もかも分からないことだらけだ。

 

鷺沢一蹴は、何度も何度も打ちのめされ、心を叩き折られ、泥まみれになりながら地面を這いずりまわる。それでも陵いのりを諦めきれず、何度も何度も何度も何度も歯を食いしばって必死に立ち上がり、陵いのりを追いかける。なぜか理由はさっぱりわからない。陵いのりは辛そうに苦しんでいる。だからオレが陵いのりを救わないといけない。

 

陵いのりは鷺沢一蹴を心底大事に思っている。別れたくて別れるわけではない。しかし鷺沢一蹴を守るために、自らを犠牲とする覚悟を示す。鷺沢一蹴には幸せになってもらいたい。たとえ自分が一蹴の隣には居られなくても、一蹴が幸せになれるなら。苦難にじっと耐え忍び自己犠牲に殉じる覚悟を示した。

 

飛田扉は、10年前に鷺沢一蹴がしてしまったことを激しく憎み、しかも一蹴が何もかも忘れてしまっていることに激怒する。

だが、陵いのりがなぜ飛田扉を必死に止めようとするのかはまるで意味が分からない。

そして飛田扉は、陵いのりもまた罪人だという。いったい陵いのりの罪とは?

 

 

物語は二転三転し、ついに、飛田扉より10年前にあった真実が明らかにされる。

それが飛田扉が憎悪する理由であった。

鷺沢一蹴は、たしかに罪人だった。

飛田扉は被害者だったのである。

己の罪深さに崩れ落ちる鷺沢一蹴。

 

そして陵いのりは、お前は誰だ?

「お前は何なんだ? 何が目的でこんなことを?」

精神が壊れた鷺沢一蹴は、最後の最後で、陵いのりを信じることができなかった。

 

鷺沢一蹴は、陵いのりを拒絶した。

それに対し、陵いのりは何もいわず、ただ黙って鷺沢一蹴の前から姿を消した。

音楽の勉強のためアメリカへと旅立ってしまった。


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その後展開省き、ラストシーンだけを取り上げる。

陵いのりアメリカへ旅立ったあと、鷺沢一蹴は足りなかった情報を知り、10年前の真相をすべて理解した。

鷺沢一蹴のなかに、もう決して揺らぐことのない結論が導き出された。

 

陵いのりは、心の底から信じられる女の子だった。


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だが既に、陵いのりアメリカへ旅立ってしまった。あるいはもう日本には戻ってこないかも知れない。何もかも飛田扉のいうとおりだった。

 

鷺沢一蹴には背負うべき罪があり、

陵いのりにも背負うべき罪があった。

だが、陵いのりに罪を負わせたのはオレなんだ。だからほんとうに罪を背負うべきなのはオレなんだ。

それなのに陵いのりは黙って耐えて忍んで、こんなオレから非道い言葉を吐きつけられても、何も言わず去っていった。

悔やんでも悔みきれない。

 

片瀬山にある廃教会の修復作業をしていると、飛田扉がやってきた。

「そんなことで償えると思ってんのかよ。」


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10年前の真相。

飛田扉もまた、被害者だった。

だから加害者であるオレを激しく憎んだ。


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すべての真相を知り、罪を背負う鷺沢一蹴。

忘れていた罪を思い出し、背負うべき罪に向き合う姿を確認し、飛田扉は去っていく。

 

飛田扉は、生涯かけて鷺沢一蹴を許しはしない。だが、飛田扉はこれ以降は、鷺沢一蹴の前に現れなくなる。

許しはしないが、認めたという心境だろう。


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鷺沢一蹴は己の背負うべき罪に、生涯向き合うことになる。孤独に苦しみ続けることになる。それが罰をうけるということ。

 

キリスト教義には「赦し」という概念がある。罪に向き合い、悔い改めることで、神の赦しをこうのである。

もちろん赦しがあるかは神様しだいだ。

 

そして鷺沢一蹴にとっての神様は、長い髪を春の暖かな風にゆらしながら、廃教会の聖堂に立っていた。


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あの日、登波離橋から投げ入れたソウチンニャン人形は、鷺沢一蹴が川から回収していた。ソウチンニャン人形を廃教会の窓に吊るしておいたのである。

再び陵いのりに再会できるよう願いをこめて。

 


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ラストシーンはハッピーエンドで終わる。

陵いのりエンドこそがメモオフ4の正史である。傷ついた。傷つけた。苦しんだ。苦しめた。

鷺沢一蹴の、身を引き裂かれる混乱。

陵いのりの、耐えつづける苦しみ。

飛田扉の、終わりのない悲痛な叫び。

すべてをのりこえたグランドフィナーレである。